報道によると、来年2023年度から給与支払いの一部を電子マネーで払えるようになるそうです。
以前から検討はされていましたが、その安全性や使い勝手を懸念する労組側が渋っており、今回も上限額の設定やトラブル時の補償などを条件に認めたような形です。
政府としては、とかく批判の多い社会全体のDX化の遅さを挽回したい思惑もあるでしょうが、果たしてそんなにハッピーな話なのでしょうか。
そもそも賃金の支払いについては、「通貨で」「直接本人に」「全額を」「月一回以上の」「一定期日で」支払うという原則があります。
例外はいくつかあり、税金や社会保険料は本人の同意が無くてもあらかじめ控除できますし、労使合意があれば財形貯蓄や組合費などを控除することもできます。今やポピュラーな銀行振り込みも原則に反しますね。これは安全性や利便性を鑑みて労働者が銀行振り込みに同意していることが前提です。従って「どうしても現金手渡しでくれ!」と言われれば、実は現金で払わなくてはいけません。
さて、電子マネーでの支払いですが、当然直接払いの原則には反しますが、ここは銀行振り込み同様、例外的な扱いをしても問題はなさそうです。
一方で銀行としては振込手数料が多少マイナスになるでしょうか。また電子マネーを扱う各社はビジネス拡大といろいろキャンペーンを打って出て自社経済圏への取り込みを図っていくのでしょうね。
ところで一番肝心な労働者にとってはどうなんでしょうね。いったん通貨で振り込んでもらって、そこにクレカ引落にQRコード決済やデポジットを設定するなどしてポイントを貯めていた人には、あまり旨味が無いような気がします。
一方でポイ活にあまり興味が無い人にとっては、デジタル決済を始めやすくなるいい機会になるのでしょうか。
最後に私のようなかつて給与の支払い業務を行っていた者からすると、支払い方法が増えるのは面倒でトラブルも起きやすく、正直「勘弁してくれ」という気がします。実はそんなことは無くて何か便利なツールが登場したりするのかしら、とちょっと興味をもってウォッチしていきたいと思います。